平成二十九年 五月七日 緑村吟詠会 会長 渡邉誠道
渡邊緑村先生が教育吟詠を創唱されて活動を始められたのは昭和元年であると、『吟聖緑村とその吟詠』(緑村吟詠会本す。したがって本年は、教育吟詠創唱九〇周年となります。また、渡邊緑村先生が昭和二十七年一月にお亡くなりになって五十五年の節目でも在ります。
現在、会員の多くの方は吟歴が長く、最近は教本以外の新しい詩の吟詠に練習の中心が移って参りました。そのためか、新しく入会された会員の皆様の中には、教本の中に一度も吟詠していない漢詩がかなり多くある方もおられます。私も一度も吟詠していない漢詩が幾つかありますし、最近全く吟じていない詩もあります。
二十五年前私が入会したころ、坦道先生は「同じ詩を何度も繰り返し練習しなさい。詩の意味を理解し、詩中の人となるように」そうすることで自然に「自得することが出来るようになる」とよくお話されておりました。
そこで、教育吟詠創唱九十年、教育吟詠大会が始まって六十五年、緑村吟詠会と改称して六十九年となる今年の本部大会のテーマは「基本に戻る」としました。
昨年の六月以降、教本の漢詩を各支部に割り振り、支部での練習、夏期講習、春期講習と練習を続けて参りました。
その間会員の皆様には、詩の意味は勿論、作者の人物像、時代背景などについても様々な資料を調べてそれぞれの詩の背景について多角的に研究されて来られたことと存じます。本日はこの一年間の研鑽の成果を見事に発揮されることと思います。
世界は今、激動の時を迎えつつあるようです。特に日本周辺の情況は明治維新当時のような危うい情況に思えます。
このような時であればこそ、先人の叡智の結晶である漢詩を吟詠し、先人の智恵を自分のものとして現代に生かす必要があるのではないかと存じます。
温故知新と申しますが、未来を切り開くヒントは常に先人の智恵にあるのではないかと思います。
本日は先人の叡智に学び、不確実で困難な現代を生きるヒントを皆様と共に見つけたいと存じます。