緑村吟詠会
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漢詩吟詠入門のしおり

昭和60年7月  坂本坦道講述


     漢詩のあゆみ

  ( 中 国 の 詩 )

 漢詩も吟詩もその本源は中国である。日本では中国の詩を漢詩と呼び,また日本で作られ同形式の詩も漢詩と呼んできたが,

最近では特に吟詠界においては,日本漢詩・中国漢詩と区別して呼ぶ傾向になっている。

 中国で古く詩という場合は,詩経を指す場合が多い。詩経は孔子が政治上の参考のために編集されたものといわれ,

四言の詩から成り立ち,内容は周代のものが多い。孔子が論語の中において,「詩に興り,礼に立ち,楽に成る」と教えているのも,

詩がいかに風教上大切なものであるかを物語っている。

 またその頃,南方の揚子江一帯の地方には楚辞なるものが大流行し,やがて漢の時代になると宮廷に楽府(がふ)が設けられ,

いわゆる楽府体なる詩型(三言・五言・七言)が生まれた。さらに漢賦・唐詩と呼ばれているように,

中国の詩は唐の時代(618~907)が一番隆盛を極め,古体の五言・七言の二形式に対して,近体の五言・七言の絶句・律詩の四形式が定まり,

李白・杜甫のような世界的詩人が排出している。

 そしてその語の詩には時代の名を冠して,宗詩(宋の時代には詞が盛んになったので宋詞とも呼ぶ)・元詩・明詩・清詩と呼んでいる。

また別に文学史上漢賦・唐詩・宋詞・元曲」という呼び方もある。中国における漢詩の形式をまとめると次の表の通りとなる。(表は省略する)

 

  (日本の漢詩の始まり)

 日本に漢字漢文が公式に伝わってきたのは,第十六代応神天皇の御代(皇紀1212年,西暦552年)で,

朝鮮の百済から王仁博士が,論語と千字文を朝廷に献上したと伝えられている。その後第二十六代継体天皇の御代に,

同じく百済より五経博士が来朝して,いわゆる五経を伝えている。当時の五経とは,礼・楽・書・論語・孝経とされており,

この楽の本になるものが詩であるから,前項で述べた中国の詩経(毛詩・晋の毛亨・趙の毛萇の詩)がこの時代に伝わったものと考えられるのである。

ついで第四十二代文武天皇の大宝令で,当時の大学講習の項目の中に,詩経(毛詩)が入っていたことが伝えられている。

 

吟詠の心得(漢詩入門のしおり後篇)


吟詠上の注意十二項

1. 善き詩歌を選ぶこと

 幸いに我が国に於いては漢詩を公然吟詠するものは,殆ど教育修養的のものであることは真にめぐまれたることである。

漢詩の本元である中国に於いてはそうでない。善きも悪しきも公然と純音楽または民謡,俗謡として歌われている。

 しかしながら,我が国の一般人口に膾炙されている漢詩の中にも,宜しくないものも無いではないから,是非選択の必要がある。

聖人賢人を始めとして英雄豪傑や,志士仁人の詠じたる詩,並びに大自然の真実なる風物を歌った詩人の作等を選ぶことが肝要である。

和歌の如きも同じことである。

2. 詩歌中の人となることに努むること

 吟詠せんとするものは,とかく節回しや声色に捉われ勝ちであるから,よくこの点に戒心し,自身先づ詩中の人となって,

作者の崇高なる人格,思想精神に触れ,ひたすら偉大なる作者の精神と自己の精神とが交流し,又は真美なる風物の中に人となって,

教育上修養上非常に有益なるものとなるのである。

3. 発音を正確明瞭に,自然に臍下丹田より発すること

 この点は特に漢詩吟詠の特異性の一つである。節回しにのみ没頭し,また声を美しく,出しやすいようにするため発音を不明瞭にするのは,

その詩の志を表現する上に非常なる禁物である。喉や口先ばかりで吟詠する時は,その調子や節回しは出来やすいが,その声に迫力がなく,

深刻に人心の琴線に触れるものがない。また健康体育の上より見ても非常なる違いである。

また俗に言う腹を作る(胆力を練る)上に何等効果がない。故に漢詩並びに和歌の吟詠は,必ず臍下丹田より行う様に努めなければならない。

4. 作為的な不自然なる声を出さぬこと

 作為的な声は色々なる変化に富んで面白味を感ずるかも知れないが,如何にも気品を損ない,下卑たる響きを持ち,

人格の向上にはこれ亦大なる禁物である。純情のもとに自然なる声を出す気持ちを粉飾し,他を欺瞞する気持ち

(それは意識的であると無意識的であるとを問わず)を養わない様習慣付けなければならない。

自己の持ち前の声を臍下丹田より発し,これを極力錬磨することである。

5. 音律は緩急高低長短の調和に留意すること

 余り声を弄して長きに失し,短きに偏し,高きに走り,低きに過ぎ,遅きに流れ,又速きに走りて,

凡そその一方に偏してその調和を欠くときは,真に諧調ある美的感情が表れない。

その声は何とはなしに聞く者をして倦怠と不快なる感を覚えさせるのである。

6. 気合の調を必要に応じて用うること

 気合の調とは,臍下丹田より最も急速に発声する調である。

これは一般の音楽には余り無い声の出し方だが,特に漢詩に於いてはその志を表現する上にも最も必要なるもので,

自己の精神ばかりでは無く,第三者の気持ちを大いに引き締めるものである。且つ心身鍛練の上に又元気を養い,精神の統一上最も大切なることである。

7. 特に漢詩の吟詠は,最初の句,最後の句に注意すること

 最初の句は大体に於いてその詩の主体であって,最後の句は即ち詩全体の綜合的結論であり,

そうで無くとも始めと末は最も注意を払わなければならない。

8. 初歩の際は強吟又は大声を以て練習すること

 精神を凝らして熱心に吟ずれば,必ず強吟となり,自ら声量を増し,息が長くなり,抵抗力を増し,

後には如何なる長詩と雖も力強く楽に吟ずることが出来る様になる。したがって声に幅を生じ,

これより又寂びを生じてくるのである。これに反して最初に楽な小声にて弱く吟ずるときは,

節回しは兎も角として吟詠の妙諦をつかむことが出来ないばかりか真の上達の見込みはないのである。

9. 同じ詩をなるべく繰り返し吟ずること

 兎角人の普通の性情は,新しきもの,変わったものへと心が向くものであるから,

なるべく一つの詩歌を徹底的に吟詠する様に努めねばならない。

繰り返し繰り返し吟じている間にその真髄をつかみ,吟詠の妙諦を悟り,随って吟詠もその堂に入ることが出来る。

しかしながら,形が簡単であって内容が複雑なるものであるから,その覚悟で精々習練しなければならない。

10. 基本の調の習得に努めること

 どの流派にも基本の調というものがある筈である。初心者はまずその基本の調の習得に努めてこれを定着させ,

しかる後他の詩にこれを応用して吟ずべきである。今仮に緑村流教育吟詠の基本の調を一例として示してみる。

 第一基本調  (起句平音,転句高音)

 第二基本調  (起句強又は高音,転句平音又は変調)

 第三基本調  (起句強高音,転句変調)

 変     調  (詩意に応じて調を変える,低音の変化音)

11. 詩意にかなった吟じ方をすること

 詩を吟ずる場合は,詩意によって基本調の何れかを採って吟ずるわけであるが,同じ第一基本調にしても,

詩情によって強・弱・緩・急・高・低等,もっともその詩意詩情にかなった調合いで吟ずるよう,より良い詩意の表現に心がけることが必要である。

12. 季節感を重んじて吟詠すること

 俳句に季節感があるように,漢詩の鑑賞にも季節感が必要であって,詩意詩情を真に感得するためには,季節感を無視しては完璧を期し難いわけである。

仮に夏季雪の詩を吟ずれば詩中の雪どけとなり,冬季に春の花の詩を吟ずれば花がしぼんでしまうことになる。

そこで大会などにおける吟題は,出来るだけ季節にあったものを選ぶべきである。

 学校における吟詠の行い方

(イ) 教室における方法(低吟又は微吟にて行う)

 1 解説後一詩毎に吟詠して,生徒の聴覚美に訴えて詩意を感得させる方法(初歩)

 2 数詩全体の解説終了後,数詩を一度に吟詠してその感得方を比較させる方法

 3 教師が各詩を一句ずつ吟調を指導する方法(初歩)

 4 教師が生徒と共に合吟して吟誦の間に詩情を体得させる方法

 5 各詩を生徒の有志に吟詠させて批評させる方法

 6 レコードによる名詩の鑑賞

 7 テープレコーダーによる生徒の有志またはクラス全員に自己の吟詠を批評させる方法

(ロ) 課外指導の方法(高吟又は強吟にて行う)

 [ 順序]

 (1)瞑想   (2)吟詠唱和之詞(瞑想のまま)   (3)指導者独吟(全員瞑想のまま)

 (4)指導及び吟詠練習  (5)発声法又は気合の練習  (6)瞑想  (7)吟詠唱和之詞

 

 [注意事項]

 (1) 不正音や音律の作為を排する。(作為とは,不自然に口に含み,鼻にかけ,極端に抑揚をつけ,又は奇妙に声を震わせること等をいう。)

 (2) 教科書の詩歌を中心に,なるべく季節に合った詩を行うこと。

 (3) 吟ずるときの姿勢態度に留意すること。


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