第18回青年部大会(平成9年11月23日)巻頭言
緑村流緑村吟詠会会長 坂本坦道
この度わが青年部が、明治維新百三十年を卜し「維新懐古」と銘打って、吟詠発表大会を開催するという、誠に時宜を得たる企として、双手を挙げて賛意を表したいと思ふ。
そしてその主眼を「日本人の心」の回復におき、その淵源を明治維新に求め、詩歌吟詠の有する五大特性の「文学性・芸術性・倫理性・歴史性・保健性」の中の、
倫理性・歴史性という、二大中心要素を、維新の詩歌の中からこれを探らんとする着想に深く敬意を表する。
戦後の日本人はものを得て心を失ったと全世界から評されている。心とは日本人の心であり、日本の心即ち日本の精神です。
日本精神の本体は、日本が世界に誇る民族の純粋性を基盤とする「清き明かき直き誠の心」なのです。誠は神の別名だとも申されている。
今世界を惑わしている悪い輩は神の心を失して本心が汚れているのです。今、私共に課せられた使命は、消極的には清らかな世の中を以て、
この悪を洗い流すことであり、積極的には、誠の心を以て道義日本を再建することです。
私は『題吟道』という拙詩の中に「吟道元来興国道、正心養気転乾坤」と詠じた。吟界は今日本を守り且つ興さんとする最高の地位にあるのです。
明治維新の詩歌の中に、日本の心を尋ねんとする今回の企が、平成維新への一粒の麦たらん事を祈念して巻頭の辞とします。